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本朝医談
奇応丸( ○○○) は、永正の頃、東大寺の太鼓破れて張かへんとて見れば、ふるき皮のうらに薬方書付てあり、製して用るに、奇応ありければ、依て名づくと、双桂集に見えたり、 返魂丹( ○○○) は、儒門事親方妙功十一丸の変方也、 金屑丸( ○○○) は、局方金液丹の変方なり、 安神散( ○○○) は、導道師の製にて、妙香散の変方なり、 延齢丹( ○○○) は、蘇合香円の変方なりといふ説非なり、蘇合香円本名吃力伽丸とて、木お用ひ、安息蘇合犀角等あり、元来梵医の鬼病お治する薬なり、延齢丹はそれらの品なく、咽喉お利し、呼吸お通ずるお主とす、順気の薬にして、導道師一渓翁授受相伝の方なりと、預薬集に見えたり、夫咽喉は、気の路なり、気は生の本なり、呼吸通順なれば、目明にして、耳きこえ、四肢百骸五臓六腑皆ととのふ、呼吸の本お知るものは、道心人心君火相火お語るべし、