[p.1090]
昔物語
一昔( 延宝天和) 六七十年以前、 みいら( ○○○) といふ薬大きにはやり、歴々衆大名も呑む、下々も呑、癪気痞に能く虚性お補ひ、脾腎お調へ、気力お強くし、食傷其外諸病に能とて呑ざる人なし、方々の薬種屋にて売、赤坂みいらとて、赤坂に大坂屋と雲生薬屋、下直に売、皆調て呑ける、代は長崎屋抔にて廿双三十双抔に売、十五双計のも有、赤坂みいらは五双三双に売る、何か薬種二三種に松脂にて煉たる様なる薬なり、病気にはきかず、又あたりもせず、何の益なき薬なり、七八年殊の外はやりて、段々止し、