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道三切紙抄

薬味多寡之分別一とは二通めの故也、総じて急病の食積、傷寒などは、薬味寡く使ぞ、多ければなれども、性が緩かになる也、単行薬方なるは、能偏にきく也、所詮此切紙は、薬味お寡くせよと曰心也、緩とは、芍芩の類也、急とは、肉圭、附子、烏豆、巴豆之類也、材は、剤はこしらへた薬、此材のみ木の材也、未製の薬也、制は与製同じ、こしらへやう也、微肯は深遠幽みの也、患は病みが也、東垣は能薬性お明めた以来の人、不明薬性の多味お好むべからず、東垣は内傷お専にした故に、脾胃お和せんために、多味おしたぞ、今も其心持あらば、東垣にしたがふべきぞ、在口伝とは、是も又多く使ことあり、遠国などから、一書で取に来るは、ちやつ〳〵と加減ならぬ故に、多味にして、偏になきやうにして遣故也、