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明良洪範続篇
十三
今大路道三、上京せられし時、大津辺の在家に、売薬の札お掛置たる見るに、はくらんの薬と書付有し、供の者ども申は、此所は、往還なる上に、京都へも才の所なれば、かた〴〵加様なる文盲の片言は書まじき事也と笑ひけるお、道三乗物の中にて聞、夫は女等が申す所片言なり、其故は、はくらんの薬は、はくらんお煩ふ者が呑、霍乱の薬は霍乱お煩ふ者が用ゆる事ぞと申されしとなり、