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春雨楼叢書
十三
貝原篤信
尾陽の学医、貝原篤信は、世人その名誉お知る、一世の編集諸書あり、〈○中略〉ある時尾州公へ、一万金の拝借願おなす、此段役人衆より、公へ言上いたしける処、深き尊慮あつて、願の通拝借仰付らる、篤信右の一万金お以、自国又は隣国の 薬店( ○○) にある処の〓( かび) 薬お買ひ切て、船に積、波涛へ捨たり、是より薬店に〓薬なし、故に薬店の薬入替つて病者少しと、篤信の筆記に見へたり、実に難有聖医の仁、後代医道の亀鑑と雲べし、