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昆陽漫録
薬升( ○○)
古へ方寸匕の類に、散薬お量る薬升あり、陶弘景曰、薬升方、作上径一寸、下径六分、深八分、内散薬、勿按挿之、正爾微動令平調爾、今人分薬不復用之と、〈今の人用ずとあれば、梁より前、薬升ありとみゆれども、いづれの代に始まること知れざるゆえ、〉周尺お以て量るなり、〉今周尺お以て量るに、〈度量衡考に雲、周尺は今の七寸一分九厘六薄三糸有奇に当る、〉上径一寸は、今の七分一厘九薄六糸三忽、下径六分は、今の四分三厘一薄七七八、深さ八分は今の五分七厘五七零四に当り、一升今の三撮零々四六六九一五九余なれば、〈上径の冪と、下径の冪と、上下径相乗の数お相併せて、百零一分五零一九九八三二四となる、これに深さお乗じ、三約して百九十四分七八三六七八五八となる、今の升法六万四千八百二十七分お以て除すれば、三撮零々四六六九九一五九余お得るなり、〉甚小くして他に用ふべからず、散薬の升たること疑なし、李時珍升積お算せず、薬升お以て古量となして註せしゆえ、通じがたし、尚証類本草お考ふべし、