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厳有院殿御実紀附録

松平式部大輔忠次が病あつきよしきかせたまひ、医官奈須玄竹恒正おつかはされ、療養せしめられ、日ごとに玄竹めして、その病体お問せたまふに、忠次いさゝかも粥などすゝるよし聞せらるれば、公にも御心ちよげに見えさせたまひ、ひたぶるに箸も下さずなど申す時は、殊の外御けしきよからぬ様に見奉れば、忠次もこのよし承り、かしこさの余り、強て飲膳おすゝめしとぞ、忠次閥閲の名門なるのみならず、公のいまだ儲副におはしませし時より、附そひ奉りしかば、諸老臣の中にも、とりわき親しみ思しめされし故、かく御憂念ありしものなるべし、〈史館日録〉