[p.1155]
今昔物語
二十四
大江匡衡妻赤染読和歌語第五十一
今昔、大江匡衡が妻は、赤染の時望と雲ける人の娘也、其の腹に挙周おば産ませたる也、其の挙周勢長して文章の道に止事無かりければ、公に仕りて遂に和泉守に成にけり、其国に下けるに、母の赤染おも具して行たりけるに、挙周不思懸身に病お受て、日来煩けるに、重く成にければ、母の赤染歎き悲て思ひ遣る方無かりければ、住吉明神に御幣お令奉て挙周が病お祈けるに、其の御幣の串に書付て奉たりける、
かはらむとおもふ命はおしからでさてもわかれんほどぞかなしき
と、其の夜遂に愈にけり、