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瘍科秘録

重舌
重舌は、俗に雲ふ、こじたなり、大人に少く小児に多し、舌下へ息肉お生じ、尖起して舌端の如し、長さ七八分に至るもあり、左右へ二片になりて生ずるもあり、或は数片になり、舌本お囲て、蓮花の形に出るものお蓮花舌と雲ふ、何れも一病なり、腫痛して舌も木強になり、言語飲食等も不自由にて、多く涎お流し、頷下に核お結び、大さ梅子の如くにして痛み、或は色お変じ、或は膿お成すもあり、幼少にて未だ言ず、痛所お告ることのならぬもの、卒に乳お 哺( のま) ず、但気むつかしく、涎お多く流し、頷下の漫腫するものは必重舌なり、