[p.1179]
内科秘録

心痛
心痛は、後世に至り、胸隔諸蔵急痛するの総名になり、脾の痛むお脾心痛と雲ひ、胃の痛むお胃心痛と雲ひ腎の痛むお腎心痛と雲ふ、慌乎として従ふ所お知らず、畢竟内景お明弁せず、外より億想するゆえ名のみ多くなりて、却て人お眩惑するのみ、金匱の胸痺心痛篇お熟読玩味し、且つ隋唐諸家の説お参考するに、心痛は心蔵病にして、即ち真の心痛なり、胃脘痛は胃病にして即ち胃心痛、蓋し痺疼の猶も甚しき者なり、胸痺は胸脇病にして、即ち諸筋諸膜の急痛するなり、此三証お分別して療治するときは、大なる過なかるべし、