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時還読我書

長安又話す、本郷元町に一人あり、隔お患て諸医束手たりしに、一日ふと家人の、蝦お焼く臭お聞て、意これお欲し、取食せしに、能納て吐出せず、仍て飯に和し喫すれば、飯お吐て蝦お吐せず、然れども爾来消息して、蝦飯相和して遂に飯食お吐せざるに至りて、漸々に快了せしお、横田宗春といへる医の親く見たりとぞ、始は伊勢蝦にてありけるお、後は車蝦も納りしと、蝦の隔お治するにはあらざるべし、其人の偶嗜ところに適せしにや、