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瘍科秘録

水㿉( ○○) 〈大陰茎、腸㿉、〉
㿉疝は、素問に出でヽ、凡陰嚢の大になる病の総名なり、水㿉も、其中の一証にて、淤水陰嚢の内へ聚り、日お積み月お累ぬるに従ひ、 漸( やヽ) 大にして、 瓜( うり) の如く 瓢( ふくべ) の如くになるものなり、全嚢大になるも、偏嚢大になるもあり、大害もなけれども、起居歩行に便ならず、陰茎も嚢中に蔵れて、小便おするに不自由なるものなり、甚大なるものに至ては、斗の如くにして、衣に余り、皮も癗瘣( ぶつぶつ) として 堅硬頑痺( かたくしびれ) 、重くして引釣、其儘に置き難く、袋に入れ紐お附け頭に掛て置くものあり、母多足と雲ふて、 偏脚( かたあし) 或は両脚腫て色お変ぜず、痛痒もなく、格別に歩行おも妨げず、鍼灸薬餌寸験なく、生涯愈ざるものあり、是は水㿉と同因なり、香川太仲已に此説あり、卓見と謂ふべし、