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空穂物語
菊の宴
御かへりなし、大将のぬしいたくなげきて、はせにもうで給て、こほす事おかたうおほいなるぐはんおたて給て、七日ばかりこもり給て、ひごとにじゆきやうしつヽ、おもふ事なし給へらば、こがねのだうたてん、こむじきの御かたあらはしたてまつらむ、月に一どさうのみあかし、いのちのあらんかぎりたてまつらんなど申給ていで給て、りうもむ、ひそ、たかまつほさるみたけまうでしのびてまうで給ふ、さるまヽに、さヽしきみちおあゆみもしり給はず、あゆみたまへば、 御あしはれぬ( ○○○○○○) 、かくてもおぼす事のかたかるべきお心ぼそうおぼしつヽまうで給お、ひぢかさあめふりかみなりひらめきて、おちかヽりなんとする時に、右大将のぬし三条の北方頭中将よりも、あて宮にきこえさしてやみなんずる事とおぼすに、なみだとヾまらず、おもほさる、それよりもかくきこえ給へり、
おもふことなすてふ神もいろふかきなみだながせばわたりとぞなる、ときこえ給へり、あて宮み給て、物もの給はず、