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叢桂亭医事小言

脚気
江戸に松井材庵なる者、脚気論お著し、諸書の論お集め評注したるものあり、又源養徳なる者、脚気類方お著し、広く脚気の方お集めたり、二書にて療治のすむと雲には非ず、此二人本邦にて脚気お唱へ始たるに非ず、脚気の世に唱る人の多き故に、思付て著述したるならん、脚気お説き、初て其治に妙お得たりと雲しは、東洋先生なりとぞ、さて又脚気は、公侯富貴人、常に膏梁お食して身お労せぬに作ると雲、是も一因にはあれども、又貧賤の人にもあり、必膏梁のみで作るとかぎるべからず、傷寒の後、或は瘧疾、又は痢の後、産後にも作る、又下疳お患て後に多く作る、骨疼なりとて治お誤ることあり、意お付て見るべし、