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牛山活套

中湿
今時仕官の人、或商人も東武に至りて鬱気し、足膝痿軟にして、面目虚浮し、飲食不進者お、俗に江戸煩と雲、是皆水土に服せざるの類也、故郷に帰るとて箱根山お越れば、多は其病不治して自ら平服す、牛山、郷に官にある時、江戸にて西国の諸侯の屋敷お見聞するに、何の所にも此病あらずと雲ことなし、多は不換金正気散お用て宜、虚鬱お侠む者は必ず死す、湿お治して不愈者は、必速に故郷に帰らしむべし、箱根お越れば自ら愈る也、一奇事の病也、国牧の傅医たらん者知らずんばあるべからず、