[p.1211]
脚気提要

総論
文化甲子の夏天、恒歳よりも大に熱す、然に中暑の病希にして、更に秋に至りても、瘧痢の病亦少し、八月より冬に至るに及んで、 脚気の病( ○○○○) 大に流行す、是れ全く暑湿の邪、既に脚に客となりたるが、寒冷の気に触るヽに至て発する者にあらずや、是れ近来衆人親しく見知る所お以て証するのみ、然れども亦同病あつて同症なし、発するに四時の不同あり、初学の徒偶一方お処して、一病お治すれば、いつにても此方にて治すると心得るは、所謂株お守て兎お待つの謗おまぬかれず、兎角古人の規矩おとりて、其の年々気運に随ひ折衷し、手段の工夫おなす時は、自ら発明すること多く、吾が言の誣ざるお知るべし、今世千金外台お唱ふるものあれども、実に的中の治お施す者おみず、滔々として皆偶中のみ、而して自らこれお以て得たりとして、漫に千金外台の名お汚す、凱かなしまざらんや、