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叢桂亭医事小言

丹毒
丹毒は寒熱し、甚煩渇して、周身定る処なく丹くなる、或はむら〳〵となるお赤遊風と雲、其丹き処、源氏雲の様になるお雲花頭と雲、又寒なく偏に大熱するもあり、三黄湯白虎湯又は犀角お用ゆることもあり、又近頃江州の大島某の、丹毒お はやくさ( ○○○○) と名づけて奇術お施印す、曰はやくさの病症は、其相顔にあらはる、最初に左右の耳及頬の色、赤又赤黒くもなるあり、夫より咽喉えむけて其相顕る也、或は腹痛するもあり、或は正気お失へるやうなるもあり、腹痛するは腹かたく、たとへば石の如く、又腹やはらかにして、腹に熱あるもあり、是は病の軽重によるなり、此病は俄に発し甚急なり、猶余病に異にして、耳及頬の色お見るお丹毒第一の見立とする也、