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塵塚談

肥癬瘡は、野鄙の民間の瘡にして、連に傍人に伝染するなれば、貴賤ともに忌嫌ふの瘡なり、高貴奥向にては、婢女に少しにも湿瘡有時は、即日に宿元へ下る事ぞかし、故に貴族の家に此瘡有事なし、されど此瘡にて、手に箸お持事もならぬほどなやみしもの、或は年久しく煩ひし者は、極て無病息災にして、長寿なる者おほし、此瘡は身おそこなひ名お失ふ病にあらざれば、余りに忌避るの瘡には有べからす、