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瘍科秘録

風癜
癜風は紫白の二証あり、本邦にては なまづ( ○○○) と雲ふ、頑癬の類にて、至て浅膚の毒なり、其瘡円暈お成し、苔蘚の蝕するやうに漸々に蔓延するなり、痛は断てなく、但痒く、四時共に発すれども、夏月暑時に多し、紫癜風は色黒く、淡墨にて染たるやうに発するゆえ、又黒癜風と雲ふ、白癜風は白色くして、細なる白屑お起すものなり、紫白共二治し易きものなり、一種身体白く駁になり、皮膚のみならず深く肉までも色お変じ、毛髪も白くなり、宛も牛馬の斑文、草木の 駁葉( いさは) の如くなるものあり、之お世に白癜風と称し来れども、 赤痣( あざ) の類にて癜風に非ず、即白駁風なり、又白癘にて癘の一証なりと雲ふ説あれども、癘には非ず、少々なれば治すれども、 開大( ひろかり) たるは難治とす、