[p.1262][p.1263]
瘍科秘録

黒子
黒子は俗にほくろと雲ふ、多く面部に発するもの也、相者の方に黒子の出たる位置にて、吉凶おとする法あり、漢の高祖は左の股に七十二の黒子ありて、七十二戦お為し、黒子も亦七十二戦に従て消たりと史記二載たり、されば黒子にも吉凶のあること必定也、皮膚に墨お点じたる如く平塌に出るお常式とす、或は高く突起して、疣目の如くになるものあり、是は翻花することあり、婦人女子の輩も目の下に出たるは泣黒子也と雲て、漫に薬お点し、灸お炷て翻花瘡になるものあり、謹べきこと也、