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病家須知

黴毒( からがさ) の心得お説
黴毒、我邦の昔は、唐瘡といふ、異域より伝来するが故なり、中華にては 広東瘡( かんとうさう) と称、その広東と雲は、南海の港津にて、此際の長崎の如き地なり、この広東より毒お支那の国内に伝播たれば、其病の起る地名お以て病名とせるなり、その病お伝たる時代、和漢ともにあまり遠からず、僅三百年前後に過まじ、意に、此病の初は、全く蕃船より伝染たるにて、異国より航海たる舶の、博多府内あたりに著たる頃にもあるべし、然お其毒の由来お遺失て、あらぬ病因お濫称、治法も各殊にして一定せぬは、いと炉〓なることなり、