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壒囊抄

あしでかきたる下絵と書るは、何なる絵ぞ、或人の雲、あしでとは文字にて絵おかくお雲、
又或抄物雲、和泉式部無双の好色也けるに、亥子の夜御歌ありけるに、態心お合せられければ、 瘡開( ○○) と雲名お式部取当て、
筆もつひゆがみて物のかヽるヽは是や難波の 悪筆( あしで) なるらん
とよめり、悪筆とは字にて絵おなすと注せる物あり、又葦手とも書也、或は木節、或は雲のはづれなどおゆがめるまヽに、字の似合たるお以て書お、蘆などの枯臥たるにそへて雲也、