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牛山活套

楊梅瘡
楊梅は、もと下疳瘡お伝染したる人、之お恥て、治すること遅滞して、一変して便毒となり、便毒一変して楊梅瘡となる、京都、江戸、大坂等の都会の所に多き煩也、鄙野の地にはあること少し、京にては 湿気( ○○) と雲也、何れも娼妓に交媾して伝染するの病也、初発には、荊防敗毒散、消風敗毒散、〈回春本条〉二十四味風流飲〈同上〉に加減して用べし、
楊梅瘡経日不愈者は、或は鼻煉れ、鼻柱朽落し、口臭く、唇欠け、或は腕の拆目膕中にあつまり、毒気膿おなし、或は総体の瘡乾て総身疼痛し、或は骨うづきになり、或は眼に毒入り、或は耳聾し、種々に変化するに因て、其人終に癈人となる者なり、之に因て人之お悪み嫌ふこと、大風に類する也、此等の類には、回春の通仙五宝丹お用べし、此方王範泉が広東より伝来る妙方也、此瘡中華にも古はあることなし、近世広東より伝染するに因て、広東瘡と名づくると、痘疹全書〈袁了凡の作〉に見へたり、和俗此瘡お 唐瘡( ○○) と雲も、 広東瘡( ○○○) と雲ことなるべし、唐と東と音同き故か、此五宝丹にも家々の秘方多し、何の方にても、真珠の真お用ひざれば其効なし、