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陰徳太平記
二十八
陶全薑最後之事
入道の最後の式、荒々語らせて、扠は疑所なき入道也とて、彼死骸の有所に行て見れば、陶の入道の屍と思しきに、股に十文字に破れたる疵の瘢ありけり、二宮、是は一年入道 便毒( ○○) お煩はれたりしが、究て剛気の人なりける故、脇刺お以て十文字に切破り、薬お付て保養せられ、忽平愈したりと聞つるが、其瘢にてぞ候べきと雲ければ、各さては首と雲死骸と雲、今は弥無疑入道也けりとて悦び勇事限なし、