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塵塚談

痔疾の奇薬に、深川辺の方言にひるこ玉といふ海虫あり、味噌汁にすこし計煮て喰べし、神効有よし、海中浅利貝のある砂地に深く穴して居る、品川辺方言に 海脱肛( うみだつこう) といふあり、 乾肉( ほしな) 沙潠( まこ) に似たりといふ、ひるこだまの事にや、ひるこ玉は冬に至れば、わけて深く蟄居す、春末より暖になれば穴中お出るゆへに、浅利貝の中に交りて得る事これあるよし、物音すれば速に穴中に入るよし、〓鼠( ぢねづみ) のごとく早しといふ、ゆへに得がたし、漢名石榼ならんか、猶識者に尋べし、