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耳囊

痔の神( ○○○) とて人の信仰可笑事
今戸穢多町の後に痔の神とて、石碑お尊崇して香華など備へ禱るに随ひて利益平癒お得て、今は聊の堂など建て、参詣するものあり、予が許へ来る脇坂家の医師、秋山玄瑞語りけるは、玄瑞壮年の比療治せし、霊岸島酒屋の手代にて、多年痔疾お愁ひて、玄瑞も品々療治せしが、誠に難治の症にて、常に右病お愁ひ苦みて、我死しなば世の中の痔病の分は、誓ひて救ふべしと、我身の苦しみにたへず常々申けるが、死せし後、秀山智想居士といひし由、かヽる事もありぬと、かの玄瑞かたりしまヽ記しぬ、