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時還読我書

文化丙子夏秋の際、都下大に疫あり、其症初起遽に少陽お犯て、熱勢熾盛、二日ならずして精神昏瞶するに至る、大抵大小柴胡黄連解毒の類の擬すべきもの多く、正陽明おなす者は少かりき、老医の話お聴に、先年は陰症懆擾する証多かりしと、先教諭の傷寒お治せられしお視に、亦多く参附お用たまひしなり、蓋この歳より以後の疫は、大略此種の証にして陰証は至て希なり、風気変遷の然らしむるものならんか、