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時還読我書

天保庚寅〈〇元年〉四月より六七月に至るまで時疫あり、患る者甚多し、其症多は初より悪寒なく熱甚く、脈緊数にして、大便下利、舌上胎なく水お欲し、劇きは赤斑お発し、或は発黄、或は衄血大便血、或は歯齦出血するものあり、清熱凉血の効お得ること多かりし、されども不治の症亦少からず、舌胎と熱候とは甚相適せざりき、且其熱の解して爽快に及ぶには甚日お引たり、軽症にても一月余、重きは二三月お踰るに至れり、邪熱血脈に沈漬せし故なるべし、前件にも雲へる如く、近年は攻補温凉ともに純一になしがたき症多きことは、これ等にても知るべきなり、