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宣草小言

民間に疫癘流行することあれば、疫病神お送ると称し、又疫病お引と号して、山伏お先に立て螺吹鳴し物さはがしく、衆人これに従ひ物お駆るが如く為ることあり、これ古者方相氏為儺と雲ものに異ならず、されば其所為に任じて可なり、又民間に富士講、大師講、又は金毘羅、或は稲荷の流行神などいひて、人々信仰することなれど、是は少昊氏之衰、九黎乱徳、民神雑糅、家為巫史、民涜斉盟、禍災薦臻、と雲〈国語〉ものにて、甚不可なり、予嘗て農父たりしとき、富士講等お禁じたりしが、今如何なりしや知らず、