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忠臣講釈

喜内住家之段
喜内、何の気も付かず、同じ屋敷奉公ならば、先君〈○塩谷判官〉のお傍仕へもさせんず物、お家は没落、我は長病にて行歩協はず、忰重太郎、何国に吟ひ居事やら、まだしも老の楽しみは、孫の太市、 疱瘡も山上仕廻たれば( ○○○○○○○○○○) 、 大役済だ( ○○○○) 、出かしたな、見やれ賢い目元でないか、偵侍の子迚、疱瘡の中でも、浦島やお山人形のぬかつた物は大嫌ひ、公〈ん〉平の人形の顔の赤いは出物の薬、遖功の兵に成兼ぬ利口者と、子よりも孫に余念なき、おヽかはいそふに、したが今年は並がよいげな、よい時美しい事仕やつたの、ほんにまあおりえる様、此様な疱瘡子の有のに、毎晩々々よう日参なさんすのふ、又かいな、そんな事、わしや聞たうないと、ひや〳〵思ふ嫂に言損ひの機嫌取、どれぼん抱てやりましよか、伯母が著物もあつかじやぞや、さあ赤いはよいが、しとのないのにこまつたと、疱瘡の禁句、くろめ兼、ぜひも納戸へ連て入、