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賀茂保憲女家集
この歌はあめのみかどの御時に、 もがさ( ○○○) といふものおこりて、やみける中にかもうぢなるおんな、ようつの人におとれりけり、さる中に、たヾもがさおなむ、すぐれてやみける、かさのみにもあらず、おほくのやまひおぞしける、からうじてこの歌よりなん、よみがへりける、そのほど冬のはじめ、秋のおはりなりければ、草木もかぜもやう〳〵かれもていく、つれづれなるまヽに、めづらしきやまひなりとて、このかさのぞやみおかきおければ、やまひさるごとくによくなむ、みんひとゆヽしく、おもひぬべしとて、いさヽかいろにもいださず、〈○中略〉もがさのさかりに、めおさへやみければ、まくらがみに、おもしろきもみぢおひとのおいためりければ、おもひあまりて、
くもりつヽ涙しぐるヽわがめにも猶もみぢばヽあかくみえけり