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内科秘録
十三
小児麻疹
麻疹は吾郷党〈○水戸〉より適起るものに非ず、麻疹の流行は古来より、何時にらも南方より起りて、漸次に北方へ及ぶものなり、九州より中国に至り、中国より京摂に至るものゆえ、前日に沙汰のありて来るものなれば、医者は勿論素人にても、一目して麻疹なることお知るべし、決して吾郷党より卒に起るものに非ず、凡そ流行病の大に行はる、は麻疹 も限らず、南方に起りて北方に遷延するものなり、於七風、琉球風の類も皆南方より北方へ行はれたり、特り邪気のみに非ず、陽気の起るも南に始て北に至るなり、庭前の草木お熟視するに、枝の出て芽の生ずるも、南は先にして北は後る、なり、