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救瘟袖暦
近来流行疫の病後に疹お発せるは、痘麻の如き一種の疹なるべし、千金方に小児十蒸八変して人となることおいへり、其状痘序の如しと見ゆ、是れ隋より唐に及てのことなり、それより漸々に痘瘡世に行はる、続て麻疹世に出て、水痘も世に出たり、此お以て見るに、痘麻の世に出べき根基は、上古より具足せるなるべし、なて今の小児に変蒸あることなし、ちえほとりと訓すれど、変蒸に似たる者お見ず、思ふに痘麻世に出べき漸に攣蒸あり、痘麻世に出で流行の疫気に感じて、一生一次に胎毒お発洩し尽す、故に変蒸なきなるべし、近来の疹疫も亦一種の痘麻の如きもの世に出べき漸ならん、痘麻の世に出べき根基は既に上古に具せり、