[p.1443]
橘黄年譜

町与力安藤源五左衛門、年五十許、往年 大下血( ○○○) お患、脱血後肛門飜出、納る能はず、痛楚甚し、福山一瘍医之お療じて痛去ると雖、脱肛収るお得ず、厠に上れば飜出益甚しく、下血淋醨、便後腸垢、及び希汁お下すこと一合余、更衣後一時許苦楚雲ふべからず、漸蓐臥お得、面色青惨、唇舌灰白、胸中動悸甚しく、腹虚満、少しく勢動すれば気息短乏、口中乾燥、四肢微腫、脈虚数、消穀善飢す、伊沢磐安之お療する数歳、依然として復すること能はず、四物加減、及補益気湯お服すと雲ふ、余曰、下血過多、中焦気虚す、故に多年治するお得ず、古人雲、血お補ふは気お補ふに如ずと、宜く先胃気お輔くべし、六君子湯加厚朴香附子炮姜お与へ、鉄砂丸お兼用す、数日にして下血止み動悸減ず、