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松屋筆記
六十五
おとらしや、かつたい、やどうか、
大和国にては、癩病の者お おとらしや( ○○○○○) といへり、名義不詳、蓋 御通有( おとほりあら) せられよといふお約ていふ歟、奈良坂に住る癩人多く、奈良の町及在郷に物乞ありくお施与せざる時、おとらしやといひけんより、名におへるにや、関東にても、乞食に物与ざる時は、通らつしやいといへり、ぼろ〳〵には〈虚無僧也〉御無用といふこと、又通例也、関東にて癩人おかつたいといふは、乞児おかたいといふより、癩人が物乞ありくに依て名づけし也、さればおとらしやもかつたいも、乞与の詞に出たる名也、