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倭訓栞
中編三十於
おほさき 上州甘楽郡の山中に、熱病のことお、 大さき疫病( ○○○○○) と称するは信濃佐久郡なども同事にて、もとは卑賤の山伏など、京都稲荷にてうけ来といふて、一二寸の紙に、狐の像お絵きたるもの、是お大さき使といふ、大さ鼠ほどの生類になり、病家につくなり、彼主の山伏祈らざれば、離るゝ事なし、此小獣、後には多く繁殖して、養ひに迷惑す、今富家にも伝りて有もあり、其家断絶に及べば、其獣も失ぬ、めとほしといふ獣によく似たりともいへば、一類なるにや、四国の犬神も、形小狗の如く、鼠の大さなり、其主平人となりて、其種お除きても、其家に伝はるといふも亦同じ、