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内科秘録

中暑
中暑は宋元以降の名なり、古は暍と謂へり、今は一口に中暑霍乱と併称して、軽き者は中暑、重き者は霍乱と心得て、二病なることお弁ぜず、愚按ずるに、人身夏月暑時に遭ふときは、腠理自ら開き、汗も多く出でヽ脾胃虚弱になり、暑邪に中り易く、又飲食にも傷られ易し、暑気に中る者は即中暑にして、飲食に傷らるヽ者は即霍乱なり、其因判然として両途なれども、両邪同じく脾胃に入て必らず吐瀉お発し、其病状の略相似たる者なれば混じ易し、第一に病因お採索して誤認すべからず、