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内科秘録
十一
婦人 崩漏( ○○)
崩漏は、又 血崩( ○○) とも、 崩中( ○○) とも謂ふ、産後に血崩するは胞衣の分離したる跡は、皮お剥ぎたるやうに赤肌になり、血脈の破れたる処より出る血なり、水の如くに洩下して、厠も真赤になり、一二升も出たるやうに見ゆるものなり、凝血の雞肝の如くに成りて下るは、一旦子宮中に留滞して、時お移したるなり、陣痛すること臨産に異ならず、卒に色お変じ、唇舌刮白になり、脈沈微、四時微冷、自汗如流、須臾にして発熱し、数日お経て熱解すると雖ども、脈尚浮弦にして、耳鳴眩暈、虚里悸動、人迎の脈は外より見ゆるほどに動き、起居する毎に呼吸促迫し、後には爪甲薄くなり、或は欠けて黄胖の如くに変ず、即血虚黄胖なり、産後には限らず、平人も適血崩することあり、其正候は産後に発する者と同じことなり、凡そ亡血する者は、諸症退きても兎角疎庸になり、臥すことお嗜むものなり或は遂に心気病になるもあり、
治法は賀川家に 遏崩の術( ○○○○) あり、救急に備ふべし、西洋にて陰門一杯に 綿絮( わた) お 螺旋( ねじ) り入れて止るの法あり、