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瘍科秘録

乳癰
乳癰は、婦人にかぎりたる病にて、常にも 鍼線( ぬいもの) にて肩お使ふときは、患ふることあれども、多くは産前産後に発するものなり、産前に発するお内吹と名け産後に発するお外吹と雲ふ、其因お考ふるに、婦人姙娠して分娩の頃に近よるときは、自然と血液乳房へ多く聚り、乳汁お醸し出さんとするの勢あり、然れども産前ゆへ、乳汁に化して外へ出ること能はず、血液遂に凝澀して癰となるなり、