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内科秘録
十三
小児頓嗽
頓嗽は又 頓咳( ○○) とも雲ふ、我郷〈○水戸〉にては 百日咳( ○○○) と称す、方言に けいけい( ○○○○) 、 しやぶき( ○○○○) と雲ひ、又 しいれ( ○○○) 、 しやぶき( ○○○○) と雲ふ、一種の外邪にして、流行するときは、延門合戸尽く之お患ふることあり、小児初生より十歳前後の者のみ之お患ひて、大人は之お患ひず、其邪必ず肺に著こと、猶天行赤眼の邪は必ず眼に著き、馬脾風の邪は必ず咽に著くが如し、初は風邪の如く、咳嗽連声頓頓として止まず、心下拘急して乳お吐き、食お吐き、続て粘液お吐き、或は吐血するもあり、胃中の物は残らず飜出して、殆ど悶絶せんと欲す、寒熱なしと雖ども、乳食共に吐き尽すゆえ、身体羸痩して、初生の児は希に死することあり、世に奇方多しと雖ども寸効お奏せず、日数大約百日お歴れば自ら愈る者なり、因て百日咳の名あり、或は疳に変じ、或は癇お発するもあり、