[p.1521][p.1522]
大鏡
二左大臣時平
此左大臣、 ものゝおかしさぞえねんぜさせたまはざりける( ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○) 、わらひたゝせ給ひぬれば、すこぶる事もみだれけるが、北野によおまつりごたせ給ふあひだ、ひだうなる事おほせられければ、さすがにやむとなくて、せちにし給ふ事おば、いかゞはおぼして、このおとゞのし給ふことなれば、ふびんなりとなげき給ひけるお、なにがしの史がことにも侍らず、おのれがかまへにて、かの御事おとゞめ侍らんと申ければ、いとあるまじき事、いかにしてかはなむとの給はさせけるお、たゞ御覧ぜよとて、ざにつきてこときびしくさだめのゝしり給ふに、この史ふむばさみにふみはさみて、いらなくふるまひて、このおとゞにたてまつるとて、いとたかやかにならして侍りけるに、おとゞふみもえとらずしてわなゝきて、やがてわらひて、けふはすぢなし、右のおとゞにまかせ申とだにいひやり給はざりければ、それにこそすがはらのおとゞの、心のまゝにまつりごち行ひけれ、