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大槐秘抄
上達部は、封戸たしかにえで、節会、旬、もしは臨時の御宴の禄お給はりて、はふ〳〵候ばかり也、禄法はめのれうなどに候也、それは多々にて候、おほよそみなたえ候にけり、忠雅中納言のいて候花山院と申所は、京極の太政大臣〈○藤原師実〉の内大臣に任たる最前のとしの封戸おもちてつくりたる屋に候、家は我ちからおもちてつくりたるがはへは候とぞ申事にて候が、これぞ封おもてつくりたる所にて、其まヽにいまだやけぬ家にて候、今の上達部は、封戸すこしもえ候はず、庄なくばいかにしてかはおほやけわたくし候べき、近代の上達部、おほく国お給はり候は、封戸のなきがする事なめりと思候に、めさるヽこそ力およばぬ事なれ、