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愚管抄

さて又ゆヽしき事の出来たりけり、承元二年五月十五日、法勝寺の九重塔の上に、雷落て、火附て焼にけり、あさましき事にて有けり、〈○中略〉やがていそぎ作らるヽ御沙汰の候べき也、当時焼候ぬるは、御死の転じ候ぬるぞ、やがて作られ候なんずれば、御滅罪生善に候べしと申されたりければ、やがて伊予の国にて公経大納言作れとて、ほどなく作り出んとしたくしけるお、是に、伊予ふたげられて、世の御大事もかけなん、葉上と雲ふ上人、その骨ある、唐に久しく住たりし者也とて、葉上に、周防の国おたびて、長房宰相奉行して申さたしたりけり、