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輶軒小録
一身田之事
伊勢に一身田と雲ふ所あり、専修寺と雲ふ寺ありて、親鸞宗の一本寺なり、世に高田と雲ふ、一身田と雲ふこと、いかなる故おしらず、近頃三代実録お見れば、元慶二年六月丙寅、勅以参河国播磨郡荒廃田一百町、賜孟子内親王、為一身田と雲へり、是に依りてみれば、一身田と雲ふは、口分田世業田の類にて、其一身に下賜せらるヽ田地の名と見えたり、昔この田お賜ふ処、後世遂に地の名となると見えたり、仏家に一身阿闍梨など雲ふことあり、あはせ見るべし、