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元正天皇の養老三年に、五位以上の文武の京官に防閣お給せしが、聖武天皇の神亀五年に之お廃して、賜ふに馬料お以てせり、是馬料お賜ふの権輿なり、馬料は養馬の料に供する為めに、京官の文武諸司、女官、及び斎宮寮、斎院司の長上官等に銭お賜ふことにて、或は官職相当の位階に依り、或は官名職号に依りて各、等差あり、而して権官の文官、員外の女官は、正員に準じて給す、馬料は春秋二孟に、既往の上日お計へて給することにて、正月より六月までお春夏の分とし、七月より十二月までお秋冬の分とし、並に上日一百二十五以上にして賜に預る、但し兵部衛府等の官人のみは、日夜の分お給す、而して夜宿の数は日直と同じ、凡て馬料の法たるや、一省一寮に某々の官位幾人、合計幾人と定めたることなれば、其省其寮に官員此数より多くして、上日皆其限に満てるときは、普く給すること能はず、因て上日共に等く、労劇亦同じきときは、官位の次第に依り、差お作して分給するなり、又縦ひ限日に満てりとも、貪濁の状ある者には与へず、二官ある者は、一の高官に従て給す、又神祗官斎宮寮は神税お以て給す、
馬料お給する次序は、初め式部、兵部、中務の三省、文武官、女官の上日お録し、簿お造り、正月七月の十日に三省の官人、太政官庁に詣り、馬料お賜はんことお請ひ、奏聞お経て、二十二日、大蔵省に於て給与す、