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太平記
三十
吉野殿与相公羽林御和睦事附住吉松折事
北畠入道源大納言〈○親房〉は、准后の宣旨お蒙て、華奢たる大童子お召具し、輦に駕して宮中お出入す、其粧天下耳目お驚かせり、此人は、故奥州の国司顕家の父、今皇后厳君にておはすれば、武功と雲、花族と雲、申に及ぬ所なれども、竹園摂家の外に、未准后の宣旨お被れ下たる例なし、平相国清盛入道、出家の後、准后の宣旨お蒙りたりしは、皇后の父たるのみに非ず、安徳天皇の外祖たり、又忠盛が子とは名付ながら、正く白河院の御子なりしかば、花族も栄達も今の例には引がたし、