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源平盛衰記
十二
安徳天皇御位事
春宮〈○安徳〉位に帥せ給ければ、外祖父外祖母とて、太政入道〈○平清盛〉夫婦ともに、三后に准ずる宣旨お蒙て、年官年爵お賜て、上日の者お被召仕ければ、絵書花付たる侍ども出入て、院宮の如にてぞ有ける、出家入道の後もなお栄耀名聞は尽ざりけりとぞ見えし、出家の人の准三宮の宣旨お蒙事は、法真院の大入道殿の御例とぞ承る、大入道殿とは、九条右丞相師輔の第三男、東三条太政大臣兼家の御事也、
○按ずるに、上日の者と雲ふ事、未だ詳ならず、今昔物語に拠りて考ふるに、或は准三宮たる人、之お荘園若しは封戸の地より召し、長上或は番上せしめて使役するお雲ふか、因て参考の為に今昔物語の文お引くこと左の如し、