[p.0341]
五代帝王物語
大殿〈○藤原道家〉は、帝の外祖たるうへ、摂政並征夷将軍の父なれば、世の従ひ恐事、吹風の草木おなびかすよりも速なり、されば山の座主、三井寺の長吏、興福寺の別当、みな御子なり、仁和寺の御室は、代々王胤にてこそおはしませども、世お手に握り給うへは、北の政所の腹に福王御前とて、愛子にて御座おば、御室の弟子に成て、師跡おうけつぎ給き、されば大殿の御葬礼の時も、殿たちよりも上にたちておはしましけるは、父の御素意のとほりなるべし、後は関白の准后〈法助〉と申、法師の准三后の宣旨、是が始なるべし.