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切米(ぎりまい)は家禄にして、廩米お以て支給するものなり、徳川幕府の時、是お春、夏、冬の三季に分ちて給与し、春借米、夏借米、冬切米と称す、全額お四分して、二月に一分、七月に一分、十月に二分お給す、是お蔵米取(たらまいどり)と雲ふ、其遠国に赴任する者、及び拝領の地に第宅お造営し、或は火災に罹る時は、未だ期限に至らずと雖も、特に給与す、之お取越米(とりこしまい)と雲ふ、切米は概ね米金併せ給するお例とす、毎季米価お掲示す、之お三季張紙直段と称す、張紙とは、城中の中の口に張出すお雲ふ、
凡そ米は三斗五升お一俵と為し、廩米の品位お上米、中上米、中米、中次米の四類に別ち、切米、扶持方、合力米以下に班給し、其制定まれり、幕府の米廩は、江戸浅草に在り、蔵奉行之お管し、切米手形改と共に切米、役料、扶持方下附の事お掌る、
扶持(ふち)は口糧なり、一人一月の分お玄米一斗五升とす、是お一人扶持と雲ふ、毎月之お給す、其受取の法、概ね切米に同じ、