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有徳院殿御実紀附録

すべて諸有司の禄、其職に応せざれば、其任にたへざるもの多く、おのづからものお貪り、財おやぶさかるの心おも生ずるなり、今少禄にして重職に居る者多し、ねがはくはその職に応ずるほど禄お賜ふべきか、某若かりしとき、上洛して郡の有様おも見しに、所司代は誠に大任にして、あづかる事も多ければ、封邑のみつぎのみにてはたるべからず、別に恩貸の地にてもあたへらるべきか、伏見奉行又繁務にして、しば〳〵都にゆきヽし、其道すがらも先例にて鎗二すぢおもたせ、その外多くの人お召具することなれば、五六千石お領する人、家禄のみにてはつかふまつりがたし、これにも官料お賜りたき事なり、すでに大坂駿府の定番にさへ一倍半倍の税お賜はる事なれば、伏見奉行に役料下されしとて、誰か議する者あらむや、この外の有司もみなこれにたぐふべし、〈(中略)僖公文案〉